パッシブデザインのポイント
1 具体的な目標を決めること
「断熱性能を上げよう」「冬に日射熱を取得しよう」「風通しを良くしよう」といった具体性に欠ける曖昧な設計では、実際に効果があるパッシブデザインを実現させることはできません。「こんな室温にするために、これくらいの断熱性能にして、これくらい日射熱を取得する」「風通しを良くするためのこんな工夫を必ず取り入れる」といった具体的な目標を立てることがとても重要です。パッシブデザインに真剣に取り組む設計者は、具体的な目標を立てながら設計を行い、その意味を建築主に説明しています。こうした設計者のアドバイスを参考にしながら、具体的な目標を決めるようにしてください。
以下に、私が考える「立てるべき目標」について書いておきます。レベルSが最高レベルで、レベルBが最低ラインです。また、とくに重要な「冬の室温目標」については、『目指したい室温(室内熱環境)』ページを参考にしてください。
LEVEL
S
●日照の把握
●冬の室温目標及び年間暖冷房負荷(暖冷房スケジュールを設定)
●年間一次エネルギー消費量
●自然風利用・昼光利用の設計ルール
LEVEL
A
●日照の把握
●冬の室温目標
●日射遮蔽の設計ルール
●外皮計算結果
●年間暖冷房費
●年間一次エネルギー消費量
●自然風利用・昼光利用の設計ルール
LEVEL
B
●日照の把握
●断熱性能(UA値、Q値)
●日射遮蔽・自然風利用・昼光利用の設計ルール
※年間暖冷房負荷:年間に必要な暖房熱量と冷房除熱量の合計
※暖冷房スケジュール:暖房及び冷房の時間、範囲、設定温度
※一次エネルギー:我々が実際に使っているエネルギーの元になっている原油、石炭、天然ガスのこと
2 計算やシミュレーションを行うこと
すべての設計について具体的な数値目標を定めるわけではありませんが、たとえば「冬のLDKの室温」など、定めるべき重要な数値目標があり、こうした目標を達成させるためには計算やシミュレーションの実施が必須になります。実際の計算やシミュレーションは建築主ではなく設計者などが行うことになるので、そうしたスキルを持っているプロに、以下のような計算やシミュレーションの結果を見せてもらい、説明を受けてください。
3 重要な数値を理解すること
計算やシミュレーションの結果だけではなく、的確なパッシブデザインを行うためには以下のような重要な数値があります。こうした数値を理解・把握している設計者は、真剣にパッシブデザインに取り組んでいると考えてよいでしょう。
計算・シミュレーション
・外皮計算(UA値、ηAC値、ηAH値)
・室温シミュレーション
・エネルギー(光熱費)シミュレーション
・日照シミュレーション
重要な数値
・熱貫流率
・日射熱取得率
・建設地の日射量