冷暖房スケジュール
建物の性能や工夫については『パッシブデザイン』のページに書いた通りなのでここでは割愛し、まずは冷暖房スケジュールについて述べます。
これまで我が国では冷暖房スケジュールのことがほとんど話題にならない状況でした。多くの住まい手は冷暖房する部屋と機器だけを選び、あとは「寒いから暖房を点けよう、暑いから冷房しよう」というような“成り行き”で機器のon-offを行っていたわけです。しかしこれでは目標とする室温やエネルギー消費量の実現は難しくなります。家づくりの検討段階で冷暖房スケジュールを想定することが大変重要です。
さて、たとえば暖房を考えてみると、暖房する範囲や時間を増やし、設定温度を上げるにつれて次のような状況が生まれます。
メリット
・寒くなる(室温が下がる)部屋と
寒くなる(室温が下がる)時間が減る
デメリット
・暖房エネルギー消費量が増える
2015年くらいから注目を集め始めた床下エアコンや全館空調は、冷暖房する範囲や時間を増やすことが前提になっていて、快適・健康へのメリットを享受することができるのですが、エネルギー消費量が増えるというデメリットがあります。このことを理解すれば、建物の性能を向上させ、工夫を凝らすことが必要になることがわかります。しかし残念ながら、こうしたシステムは快適・健康へのメリットばかりに注目が集まり、省エネのために建物の性能や工夫をしっかり考えようとする姿勢を持たない住宅会社や建築主がたくさんいます。
またここで述べたことからもわかるように、冷暖房計画は「建物」「冷暖房スケジュール」「冷暖房機器」という3つの項目をそれぞれ単独で考えるものではなく、一緒に考えながら進めるべきものです。
冬の室温目標達成を目指した場合の暖房スケジュール(暖房する範囲・時間・設定温度)の設定例。非居室(廊下や脱衣室)にも暖房する設定になっているのは、暖房室と非暖房室の温度差目標の達成に必要という判断からです。さらに保温性能が高い建物であれば、非暖房室の暖房は不要になるかもしれません。